一人で会社を作るには?必要な手順や費用、個人事業主との違いについてわかりやすく解説!

 一人会社とは、社員や取締役などの役員を一切設置せず、代表取締役たった一人しかいない会社のことです。

たった一人で事業を行っている場合でも、個人事業主ではなく株式会社の代表取締役を名乗れるようになったのです。

今回は、そんな一人会社についてご紹介していきます。

一人会社とは

 一人会社とは、社員や取締役などの役員を一切設置せず、代表取締役たった一人しかいない会社のことです。

株式会社であれば取締役が必要かと考えるかもしれませんが、それも平成18年5月1日(会社法 第327条)より、取締役会を設置しなければ不要となりました。

参考:会社法 | e-Gov法令検索

たった一人で事業を行っている場合にも、個人事業主ではなく株式会社の代表取締役になれるようになったのです。

今回は、そんな一人会社についてご紹介していきます。

個人事業主との違い

一人で事業を行っているということは個人事業主では?と思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかしそこには決定的な差が生まれるのです。

個人事業主は個人で何か仕事を行い、その報酬を受け取るのも個人となります。

当然課税に関しても、個人が受け取った報酬にそのまま税金がかかります。

対して一人会社の場合、報酬を受け取るのは会社です。

そのため会社が課税の対象となり、固定給与も会社から個人が受け取るというシステムとなります。

一見ややこしく感じるかもしれませんが、法人として会社が契約を行えるメリットがあったり、税金に関しても個人事業主と一人会社とでは大きく異なるのです。

一人でも会社は作れる

冒頭でもご説明した通り、平成18年5月1日より取締役会を設置しないという条件であれば取締役も不要となり、完全に一人で会社を設立することが可能になりました。

このことにより、取締役に支払う役員報酬も考える必要がなくなったことから、会社を運営する点において大きなメリットが生まれました。

個人事業主として活動していると、収益が上がれば上がるほど税金もどんどん高くなります。

しかし、一人会社を設立することで会社から報酬を得るという形にすることができ、さらには自分に対する給与も人件費として経費計上できることから、年収800万円を超えたあたりから法人化する方が増えてきています。

一人会社のメリット・デメリット

法人化して一人会社を作るメリットとデメリットについてご紹介していきます。

世の中には、個人事業主として年収1000万円を超えている方もいらっしゃいます。

そういう方が実際にいらっしゃるということは、個人事業主のままでいることにもそれなりにメリットがあるということなのです。

メリットとデメリットの双方を理解することにより、自分がどの形態で事業を運営していくのかが見えてくるでしょう。

一人会社のメリット

一人会社を設立するきっかけとして最も多いのは「税金対策」です。

個人事業主として活動していると税金がどんどん上がり、年収が上がったはずなのに手元に残るお金が少ないという方は大勢いらっしゃいます。

そこで、一人会社を設立し会社から給与を受け取るシステムにすることで、会社としては給与を経費として計上でき、支払う税金を減らすことができるのです。

また、取引先や金融機関からの信用を得るために一人会社を設立する場合もあります。

取引先の場合は個人との契約ではなく会社同士の契約となること、さらにはある程度の利益を上げているのではないかという憶測が立つため信用度がアップします。

さらに、金融機関において債権の回収が不能となった際にも会社法が適応されることから、法人にしたほうが融資を受けやすくなるのです。

一人会社を設立する方は、これらのメリットを受けたくて会社を設立することが多いです。

一人会社のデメリット

一人会社を設立するということは、メリットだけではありません。

そのため会社を設立しようと考えている方は、デメリットもしっかり把握しておく必要があります。

まず、法人となることで経費が多くかかります。

これは、法人税がプラスされることや、会社として運営する上で個人事業主では不要だった経費が多くかかってくることが原因です。

さらには法人となることで税金が複雑になり、場合によっては脱税に該当してしまう可能性もあります。

税制度に関しては現役の税理士でさえ適応させるのに一苦労であるという声もあるので、目まぐるしい税制度への対応のために税理士にお願いすることもあります。

また、お金に関しては会社のお金と自分のお金とをしっかり分ける必要があります。

個人事業主であれば事業で得た収益はそのまま個人の収益となりますが、会社を設立すると収益は会社の持ち物であり、自分のお金にするためには給与という形で受け取らなければなりません。

この点が曖昧になってしまうと横領罪にも該当するので、厳重に注意していく必要があります。

一人会社を作る手順

メリットとデメリットを理解し、自分には会社を設立したほうがメリットが高いと考えた方は、いよいよ会社設立のための第一歩を踏み出すこととなります。

まず、会社を設立しようと考えた際に大まかに行わなければならないことを把握しておきましょう。

個人事業主の開業手続きとは大きな差があり、さらにはお金もかかりますので一歩を踏み出すことに躊躇するかもしれませんが、この一歩を踏み出すことが将来の分かれ道であることも忘れてはいけません。

ビジネスモデルを定める

まずはどんな商売をしていくかを決めることです。

すでに個人事業主として活動されている方にとってはこのステップは不要かもしれませんが、金融機関の融資を受けやすくなることから、事業拡大を狙っている方はビジョンを練り直さなければなりません。

新たにビジネスを始めたり今いる会社から独立しようと考えている方は、ビジネスモデルを明確に定めていく必要があります。

どのように採算をとっていくかが重要となり、どれくらい経費がかかるのか、どれくらい収益が上がるのかなど具体的であればあるほど良いです。

目的は会社を設立することではなく事業を軌道に乗せることですが、具体的なビジネスモデルは今後の経営にも役立つので、力を入れて設定していきましょう。

基本事項を決めて定款を作成する

定款とは、その会社の取り決めが書かれている書類です。

定款には所在地や資本金、会計などの記載があり、会社を運営していく上での基本ルールを記載しなければなりません。

そのためにはまず、会社の基本事項を決める必要があります。

定款の作成に関しては弁護士などに相談するのも方法の一つではありますが、インターネット上に雛形がたくさん掲載されているので、それらを参考にして作成してみると良いでしょう。

また定款だけではなく会社設立の書籍なども出版されているので、それらを読んでおくと相談した際にも会話がスムーズに進みます。

法務局に法人の設立届を行う

いよいよ法務局へ行き、法人の設立届を提出しましょう。

すでに個人事業主として開業されている方は、なんとなく開業届と似ているような気がするかもしれませんが、法人の設立届を提出する際には必要書類を揃えなければなりません。

登記の申請を行ったり、先ほど作成した定款や印鑑証明の提出、さらには印紙代として最低15万円を払わなければならなかったりと、会社設立の重みをここで感じることとなるでしょう。

法務局では予約制ではあるものの無料相談窓口も設置されているので、特に登記での不明点などがある場合は利用しても良いですね。

会社設立後の手続きを終わらせる

法務局での手続きは1週間から長くても2週間程度で終わり、晴れて会社設立となります。

しかしこれで終わりではありません。

法人が設立されたことで、税務署や年金事務所へ申請を出すことと、さらには地方自治体に営業の許可をもらわなければならないのです。

従業員を雇う際にはそのほか労働基準監督署などへも行かなければなりませんが、今回は一人会社の設立なのでこれらの業務は不要です。

会社を経営するためにはたくさんの行政機関へ出向くことになりますが、ここまで来ると会社としてのスタートを切ることができます。

一人会社を作るときに注意したいこと

一人会社を設立する際にはいくつか注意点があります。

この注意点を確認することで、「こんなはずではなかった」ということをなくしていきましょう。

場合によっては、取り返しがつかずに、せっかく設立した会社を畳んでまた1からスタートしなければならないこともあります。

自分の理想と選択したことに相違がないかを確認しつつ、時間をかけて確実に会社を設立していきましょう。

 

会社設立の費用はいくら必要?

個人事業主として開業する時とは異なり、会社設立には費用がかかります。

株式会社の場合、費用として最も高額なのが登録免許税分の15万円です。

資本金が多い場合は資本金の0.7%となりますが、会社設立のためには最低でもこれだけのお金がかかります。

また、定款を提出する際に印紙代の4万円もかかりますが、これに関しては現在電子定款を利用することによって不要となります。

ただし、自分で電子定款を作成しようと思っても編集に必要なソフトなどを購入しなければならないこともあるので、場合によっては4万円を超えてしまうこともあります。

その他にも印鑑証明などを発行しなければならないので、もし自身で全て行ったとして20万円程度のお金がかかります。

さらに司法書士や税理士などの専門家に依頼する場合は、これにプラスして報酬が発生します。

専門家に依頼する場合は誰にどの程度依頼するのかにもよりますし、さらには設定している報酬も専門家によってかなりの違いがあるため一概には言えません。

会社を設立しようと考えた際、最低限20万円はかかるということを覚えておきましょう。

株式会社と合同会社、どっちがいい?

一人会社を設立する場合、多くの人が株式会社か合同会社かで迷います。

合同会社の場合は出資者がそのまま経営者となり、さらには登録免許税が7万円と少しリーズナブルに会社を設立することが可能です。

一人会社を設立するにはどちらもあまり違いがないため合同会社でも良い気がしますが、合同会社では投資を受けられないことは理解しておきましょう。

将来的に事業を拡大し投資家から出資を受けようと考えている方は迷わず株式会社です。

また、信用度にも違いがあります。

世間で会社として認知されているのは合同会社よりも株式会社が多く、結果として株式会社のほうが信用度が高いと言わざるを得ません。

会社の種類に対して精通している金融機関ならまだしも、会社形態をよく知らない取引先からの印象では株式会社以外の形態は信用度が若干劣ります。

これらのことを踏まえ、事業を拡大していきたい考えがあるのであれば、イニシャルコストは8万円ほど高額にはなるものの株式会社を設立することをおすすめします。

副業の節税目的はタイミングが大切

節税目的で一人会社を設立しようと考えている方にとっては、設立のタイミングは重要です。

一般的に年収800万円を超えた際には会社を設立したほうが良いと言われていますが、これには所得税と法人税が関係しています。

ご紹介した年収800万円の所得税は23%のエリアに該当します。

一方で法人税となると資本金1億円以下の法人で、さらに年800万円以下の法人税は15%となります。

この法人が所有するお金から年間自分への報酬としていくら支払うかにもよるので一概には言えませんが、うまくやりくりできるなら800万円を超えたあたりから法人化するというのが一般的な考えです。

自分の年収をいくらに設定するのかを検討し、支払うための所得税とその分を引いた法人税を計算することで自分と会社が年間に払うべき税金が見えてくるので比較ができます。

一人会社であれば、例えば使用する携帯電話や車、パソコンなどは法人として経費計上でき今までよりも低コストで生活することもできるため、これらで悩まれた方は一度税理士に相談してみるのがベストと言えます。

 

リスクを理解する

会社を設立したからと言って、もちろんメリットばかりではありません。

小さな会社でも経理がいることからお分かりの通り、会社を運営するには経理関係の業務が山のようにあります。

日々の収入と支出以外にも、役所へ提出する書類を準備しなければなりません。

これらを外注することも可能ですが、その分経費がかかってしまうことは注意しましょう。

経費として換算されるということは税金を換算する際にもちろん引かれますが、お金が出ていくということには変わりありません。

また、会社を設立した場合には社会保険に入らなければならないという義務もあります。

単純に会社を設立すれば節税になるというだけではなく、これらのリスクもしっかりと踏まえたうえで会社設立を行いましょう。

代行サービスを活用する

初めて会社を設立する方にとっては、どんな書類を揃えたら良いのか、またはどこに提出すれば良いのか戸惑ってしまう方も多くいらっしゃいます。

ここで、会社設立に関しては代行サービスを利用するという選択肢も覚えておきましょう。

余計なお金がかかってしまうかと思いがちですが、前述した通り定款の提出を電子定款することにより4万円がかからなくなるので、代行サービスに手数料を払っても自分で行うより安く済むパターンもあります。

費用に関しては利用するサービスによってさまざまなので、気になった方は一度調べてみることをおすすめします。

まとめ

会社設立に関しては、個人事業主から法人にしたり、さらには節税のために会社を設立する方がいらっしゃったりとさまざまです。

タイミングで悩まれる方も大勢いらっしゃいます。

会社を設立すると簡単に廃業できないこともあるので、しっかりと時間をかけて考え、決意が固まったら一人会社設立に向けての一歩を踏み出しましょう。